RM20:箱庭秘封

RM20:箱庭秘封

蓮子とメリーの箱庭の作り方。

  • 頒布:2018/11/11 科学世紀のカフェテラス
  • 装丁:B6サイズ/44ページ
  • イベント会場価格:1500円
  • 自家通販 ※11/30まで:(冬コミ受取自宅発送

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蓮子とメリーが描く箱庭。そして二人の歩む先をあなたが作るお話。
ゆるやかに語られる小説と、蓮子とメリーのアクリルスタンドセット。


 少女たちの笑い声が、森奥の庭から聞こえてくる。

 うっそうと茂る森の中、そこには白く窓の大きい建物があった。その前にある大きな庭で、木漏れ日に紛れるように少女たちが地を駆け、空を飛び回り、各々の生を謳歌している。

 ある者は神職と見紛うばかりの和装を羽織り、ある者はまるで今夜の舞踏会のためにおめかししたような、艶やかなドレス。なぜかお面を付けて踊る者もいれば、木陰で友人と飲み交わす者もいた。

 彼女らの所業は、年齢にそぐわないようなしぐさもあるが、誰しもが少女の姿だった。

 少女たちだけの、楽園。

 まるで、そう呼び習わされてもおかしくないような、そんな世界。

 その場所で、少女たちは総じて思い思いの時間を過ごしていた。

 しかし、しばらく経ち、聞き慣れたような始業チャイムのような音色がスピーカーから聞こえると、誰しもが我先にと大きな建物の中に入っていってしまう。

 すると、人が外にいなくなったのを見計らってか、空が青から灰色へと徐々に色を変えた。空の色はあっという間に彩度を失い、数分で辺りには雨粒が降り始めてしまう。最初はぽつぽつと地面を静かに濡らすだけだった水滴は、やがてざあざあと地面に叩きつけるようになった。

 あとは、今までの少女など誰もいなかったように、雨の降る森と、整った白の建物だけが残される。

 その前でただひとり、置いていかれるように立ち尽くしていた少女が、ふと傘を持ち上げた。

 緩やかなウェーブの金髪と、紫の瞳。そして、ゆったりとした紫色のワンピース。

 その少女は、建物の中へ入ってしまった彼女らを慈しむように、眼を細めながら優しく微笑んだ。そして建物の周りをゆっくりと歩き始める。雨の中で、傘を差してはいるものの、裾をまるで濡らさずに歩く少女は、まるで絵のようにも見えた。

 大きな庭の各所には、四季折々の鮮やかな花が植えられている。

 それに加え、軒先近くにもたくさんの花壇が並べられており、赤・黄・橙・青・紫、まるで虹のグラデーションのように花の色が移り変わっていく。白レンガで組まれた花壇は、よく手入れされているのか、どの花も元気に咲き乱れていた。もしかしたら秋口に植え替えたばかりなのかもしれない。

「……とても、きれいね」

 少女が、ふとつぶやく。

 今や誰もいない場所だ。誰かに語りかける言葉は持たない。

 だから、この言葉は少女の心から、ふと、こぼれ落ちてしまったものだった。